東日本大震災が発生したとき、「ちきゅう」は青森県の八戸港に着岸していた。高さ8m超の津波のために港内は一時的に洗濯機のごとく濁流が渦巻く状態になったが、船内見学のために来訪していた小学生48人を含む乗船者全員が無事。船体の損傷も最低限に抑えられた。あの日、「ちきゅう」の船内では何が起きていたのか、恩田裕治船長にお話しいただいた。 (2011年12月 掲載) 最善策を決断する勇気 地震発生の瞬間、私は船長事務室にいました。船体が上下に大きく揺れて、2日前に発生した地震以上の規模だと感じました。急いでブリッジに向かい、周囲の状況を確認すると陸上では工場の建屋から黒や白の煙が立ち上っています。船内見学中だった小学生のなかには、大きな揺れに不安を感じる子もおり、「この船に乗っていれば大丈夫だよ」と伝えました。 船にとっての脅威は地震よりも、その後の津波です。地震発生直後に発令された津波警報は高