ケモモクという古狸は、六千四百七十五歳のとき、人間に幻覚を見せる術を会得した。 ケモモクは会得した術を使って人間に悪戯をしてみようと考えた。そこで彼は、狸たちが棲む森から出て、トベリケラという人間の国へ行き、その国の都の城門をくぐった。そして、都の中央にある広場に立った。 「我が名はメゼム」とケモモクが声を広場に響かせると、広場にいた人間たちは一斉に彼に視線を向けた。彼らの視線の先に立っていたのは、古狸ではなく、若く美しい人間の男性だった。 「我は神なり。我に祈りを捧げよ。さらば汝らに天国での幸福が与えられん」とケモモクは語った。しかし人間たちは彼の言葉を信じなかった。「お前が神だと言うなら、その証拠を見せろ」と彼らは口々に叫んだ。 ケモモクの近くにいた商人の男は、売物の卵が入った籠をケモモクの前に置き、「お前が本当に神なら、この卵を今すぐ鶏にすることなど、できて当然だろうな」と言った。
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く