不思議に堪へずして、自分は金色燦爛(きんしよくさんらん)たる珍玉の明光を拝して、何となく力強く感じられ、眺めてゐた。次第々々に玉は大きくなるとともに、水晶のごとくに澄みきり、たちまち美はしき女神の御姿と変化した。全身金色にして仏祖のいはゆる、紫摩黄金の肌で、その上に玲瓏(れいろう)透明にましまし、白の衣裳と、下は緋(ひ)の袴(はかま)を穿(うが)ちたまふ、愛情あふるるばかりの女神であつた。女神は、自分の手をとり笑(ゑみ)を含んで、 『われは大便所(かはや)の神なり。汝(なんぢ)に之(これ)を捧(ささ)げむ』 と言下に御懐中より、八寸ばかりの比礼(ひれ)を自分の左手(ゆんで)に握らせたまひ、再会を約して、また元のごとく金色の玉となりて中空に舞ひ上り、電光石火のごとく、九重の雲深く天上に帰らせたまうた。 その当時は、いかなる神様なるや、また自分にたいして何ゆゑに、かくのごとき珍宝を、かかる寂寥
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く