これから書くのは、言葉や論理と、その意味に関する話だ。フレーゲらによる、物事を厳密に考える言葉の探求は、現代論理学や分析哲学の出発点になった。まずは、その哲学を探りながら、関数プログラミングの話でよく耳にする「参照透過性」という概念を理解することを最初の目標にしたい。 言及 Reference (Stanford Encyclopedia of Philosophy) 普通、記号には表す対象が存在している。記号と記号が表す対象との間にある関係を、言及(reference)という。*1たとえば、「東京タワー」や「港区にある電波塔」という言葉は建造物の《日本電波塔》への言及だし、「港区」や「東京タワーのある区」という言葉は場所の《東京都港区》への言及だ、などという。*2このような、記号の意味とは言及対象のことなのだという考えは、いろいろある意味の捉え方のうちのひとつだ。(直接言及論 Direc