2020年東京五輪エンブレムのコンペティション(設計競技)に参加した立場から意見を述べたい。1位の当選者に発生した創作姿勢への疑念や、組織委の判断による当選後の不透明な修正が指摘されてきた。参加デザイナーとして実に耐えがたい思いであった。さらに今度は特定のデザイナーへの参加要請が不当な行為であったかのように報じられ始めた。審査の本質を見誤らないために、ぜひ冷静な議論と判断を期待したい。 参加者の立場で言うと今回の「公募」は開かれていたと感じている。1964年の東京五輪に始まり、札幌五輪、愛知万博などは全て、数名の指名コンペだった。それに対して今回は、応募資格を満たす104名ものデザイナーで競われた。閉じているどころか前代未聞の開かれたコンペだったのである。 門戸を開放すれば質が高まるわけではない。逆に薄まることが懸念される。フィギュアスケートでも、グランプリファイナルに出場するには実績が必