斉藤環という精神科医が二月二四日付けの朝日新聞に寄稿した文章は、正直言って何が言いたいのかさっぱりわからなかったのだが、偏向した内容だったことだけはよくわかった。曽野綾子氏が書いたコラムについてだが、斉藤は、 『日本の言論界を妖怪が徘徊している。「キャラの立った高齢者」という妖怪が』 と曽野綾子を評した。なんという無礼なやつなんだろう。 人を妖怪呼ばわりするような医者に診てもらう患者さんは可愛そうだと思ったが、案外とこの精神科医はメディアへの「露出」がお好きのようだから、病気で苦しむ人なんか二の次に考えているのかもしれない。この精神科医にかかれば、医は仁術ではなく「算術」になるのだろう。とまれ、精神科医を名乗る者が、こんなに「偏向」していていいのだろうか。ヤブなのかも。 ということで、「偏向」について。私にしては驚くほど短い前フリだ。 昨年一一月七日、作家の百田尚樹氏が書いた『殉愛』という