中国政府は一九八五年、中曽根康弘首相が靖国神社の「公式参拝」を行なった際、正式に抗議を開始した。A級戦犯が祀られている神社に日本の首相が参拝することは日本政府の戦争責任認識を疑わせ、日本の侵略の被害を受けたアジアの人びとの感情を著しく傷つけるというのが、中国政府の一貫した批判であり、韓国政府もこの点では一致している。中曽根首相は中国政府の非難を受けて、翌年から参拝を中止した。ところが小泉首相は、中国や韓国の批判を「内政干渉」として斥け、逆に「外国の非難にも屈せず堂々と日本の立場を貫く指導者」というイメージをつくり出して、支持率の維持に利用した。その結果、中国や韓国の指導者は小泉首相との首脳会談をたびたび拒否し、日中、日韓の政治的関係は「最低」と言われるところまで落ち込んでいたのである。 日中、日韓の外交問題として見る限り、靖国問題は靖国神社がA級戦犯を祀っている点に絞られていく。政治もメデ