発達障害の一種で、対人関係を築くのが不得意な「自閉スペクトラム症(ASD=autism spectrum disorder)」について、発症の仕組みを脳科学的に解明する研究が進んできた。治療薬の開発などにつながると期待されている。(竹内芳朗) ASDは、一般には「自閉症」「アスペルガー症候群」などと呼ばれる症状の総称。人口50~100人に1人の割合に上り、日本では計100万人以上とみられる。男性が女性より数倍多い。全体として▽コミュニケーションが不得意▽普段と違う行動を嫌がるなど、こだわりが強い▽視覚や聴覚など五感が非常に敏感、あるいは鈍感――といった特徴がある。社会生活で苦労することが多い一方、特定の分野で優れた才能を発揮する場合もある。 ASDは、脳機能の障害が主な原因と考えられ、15番染色体の遺伝情報に変異のある例が知られている。理化学研究所脳科学総合研究センターの内匠(たくみ)透シ