自殺やうつ病による経済的な損失が09年で約2・7兆円に上るとの厚生労働省の発表について、自殺者の遺族からは「人の命をお金に換算しないと重大さが伝わらず、世の中が動かないのは悲しい」との嘆きが聞かれる。一方、うつ病で仕事を失ったり休職した人たちは、復職を支援する精神科医の下で懸命にリハビリを続ける。現場の医師は「この数字は決して大げさではない」と述べるとともに「復職に向けた企業側の協力が不十分だ」と問題点を指摘した。【奥山智己、堀智行】 東京都港区のオフィス街にある精神科診療所「メディカルケア虎ノ門」。午後8時の診察終了間際になっても待合室にはスーツ姿の男性患者が目立つ。 同院が治療に加え、復職支援に取り組み始めたのは05年。五十嵐良雄院長は「働き盛りの30代を中心に、うつで休職しなければならない人が増えてきたことがきっかけだった。症状が落ち着いて復職しても、すぐに休職する患者も多く、『なん