「ワーキングプア」「子どもの貧困」……。格差や貧困が社会に広がっている。今回の新型コロナウイルス感染拡大による広範な自粛と経済活動の落ち込みで、貧富の差が一段と広がるのは間違いない。 いまからちょうど90年前の東京は現在以上に貧しい人が多かったが、違うのは「貧民窟」あるいはスラムと呼ばれる地域がいくつも存在したことだ。その一つ、板橋区の「岩の坂」で発覚した事件は世間の度肝を抜いた。もらった子どもを殺す犯罪が地域ぐるみで行われ、当時の報道では被害者は40人以上ともいわれた。しかし、そのほとんどはうやむやになり、地域の存在もいつか忘れられた。そこにはメディアの責任を筆頭に、さまざまな理由があった。 今回一つお断りしておかなければならないのは、文中にいわゆる「差別語」や「使用禁止語」が登場する。聞き慣れない職業名もある。言い換えはできるが、それでは当時の社会の雰囲気や報道の問題点が分かりづらくな
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