ブックマーク / delete-all.hatenablog.com (168)

  • さよなら夏の日 - Everything you've ever Dreamed

    強すぎる日射しから逃げるように駆け込んだホームセンター。期待外れの弱いクーラーのおかげで汗がひかない僕を、ビキニ水着のキャンペーンガールがポスターの中から嘲笑う。またサボっているの?とでも言うように。止まらない汗をタオルでふこうとした僕の視界の隅に、あるはずのないものが映った。目を凝らす。間違いない。間違いなくそれは僕の古い知り合いだった。 父はデザイナーだった。蓄音機に耳を傾ける白い犬がロゴマークに描かれていた家電メーカーを辞め、独立した父が手がけたのは、オーディオ、腕時計、雑貨、エトセトラ。それらのプロトタイプや失敗作や断片は子供の頃の僕の玩具がわりだった。父の仕事たちは、父の記憶が落ち着いたものになっていくのと歩調をあわせるように役目を終え、世の中から消えていった。僕はカタログから少しずつ消えていく父の仕事たちと父の姿を重ねてすこし寂しくなったものだ。「プロダクトは消費されることが一

    さよなら夏の日 - Everything you've ever Dreamed
    ponkotukko
    ponkotukko 2014/07/24
    どんな出来事があっても自分の人生は自分しか消費できないんですよね。
  • 夜の接待してきた。 - Everything you've ever Dreamed

    今だから告白するが、あのとき、僕は己の巨神兵が既に朽ち果てている現実に安堵しながらも、心のどこかで彼の神兵が甦り、猛々しく咆哮することを祈っていた。さながらニンジャのように感情と気配を消し、その祈りを、あの忌々しい山陰の巫女「きゃりー」に悟られないようにして。 一週間ほど山陰地方に出張していた。神の国、山陰。その地で仕事を通じて知り合ったトトロ似とがぶがぶ酒を飲み、アッパーになったところで、座った目をしたトトロから「女の子のいる店に行こう」と提案された。飲み屋ではなかった。仕事ではなく割り勘だよ。これはプライベートだよ。トトロは言う。仕事でないなら…EDだし…、断ろうとする僕の顔色を読んだトトロは「これは仕事ではないけど、仕事なんだよ、課長。いいの?仕事がどうなっても」と破綻しているが説得力だけはあるロジックで僕を陥落させた。 トトロに招かれるまま暖簾街から温泉街へタクシーで移動。艶やかな

    夜の接待してきた。 - Everything you've ever Dreamed
    ponkotukko
    ponkotukko 2014/07/23
    ほんとに巨神兵なのか疑わしいところ
  • 養子縁組に対する妻のリアクションと僕に求められた資質について - Everything you've ever Dreamed

    先入観とは恐ろしいもので、当代随一のハリウッドスター、ブラッド・ピット氏の外見、人格、性格、収入、感性、社会的地位、運動神経、それらひとつひとつの要素を、薄皮を剥がすように注意深く取り除いて丸裸にして比較してみると、僕とほとんど差がないことに気付いてしまった。なぜ、このような検証をするに至ったのかというと昨年からの不妊治療がうまくいっておらず、ふと、養子縁組を思い立ち、養子を育てている著名人として頭に浮かんだのが幸か不幸かブラッド・ピッド氏だったわけだ。丸裸にしてごめんブラピ。 不妊治療に対する不安や焦りがないといえば嘘になる。普段の生活のなかでは表に出さないでいるものの《子供もうダメかも》という重苦しい空気は口には出さずとも僕との頭上に確実に立ち込めていて、たとえば金曜ロードショーで「もののけ姫」をみていても、「シシ神様ですら巨大化するのに…」という僕の不能をぼやくの独り言が僕の胸を

    養子縁組に対する妻のリアクションと僕に求められた資質について - Everything you've ever Dreamed
    ponkotukko
    ponkotukko 2014/07/09
    こんな夫婦になりたい
  • 【W杯】細かすぎて伝わらない日本対ギリシャ - Everything you've ever Dreamed

    サッカーをまったく知らない、興味もないが、仕事で試合を観られない僕のためにLINEで試合を中継してくれた。手がはなせないので休憩時間にまとめて見るしか出来なかったけれど、当にありがたい。今日はこの幸せを皆さんにも届けたいと思う。(ルールについては家を出るときにボールがゴールラインを越えたら得点とだけ教えておいた) ◾︎試合開始 「ピーッ。」 「ゴールラインを越えた!まず一点」 ※早々に点が入ったらしい 「日がカードゲット!(^^)」 「イエローがギリシャ人を一人斃した!」※録画しておいた戦隊ものを観はじめたようである。 「あちらこちらでズザーッ!」 「日本代表11対10でギリシャに勝ってるよ(^^)」  ※勝っているらしい。大味な試合だ。 「前半終了。ピー!」 ◾︎前半終了 「今のうちにウンチ(*ノω・*)」 ◾︎後半開始 「蹴りあい」 「ギリシャはヒゲがすごい」 友人(@Gehei

    【W杯】細かすぎて伝わらない日本対ギリシャ - Everything you've ever Dreamed
    ponkotukko
    ponkotukko 2014/06/20
    タマへの執念は伝わった
  • 妻がXVIDEOSの真実を知ってしまった。 - Everything you've ever Dreamed

    XVIDEOSとXEVIOUSが似ていることに気付いたとき、僕は己の天才を畏れた。 僕は生来独り言が多く、気になっていることが状況に関係なく飛び出すものだから、隠し事が出来ないし不気味に思われるしで難儀してきた。最近は無意識のうちに「エックスビデッ」と口にしてしまうのが悩みだった。 即座に僕は発見を活かした。《xvideosはxevious》と暗示をかけることで僕は独り言による秘密の漏洩を回避しようとしたのだ。爾来、独り言は「ゼビウス!」となり、xvideos鑑賞に備えて気になった女優さんの名をメモ帳に書き留めるときなども次のように記述している。「ゼビウス/峰なゆか」「xevious/mine nayuka」。 二カ国語でこのような姑息な隠蔽をしなければならないのは、がアダルト動画を忌み嫌っているからだ。理由はわからない。夕暮れ時、台所に立つの背中に訊いたことがある。「僕がアダルト動画

    ponkotukko
    ponkotukko 2014/05/30
    「こんな粗い画質で…よく…」で涙が出るほど笑った
  • ラブホテルをはじめるのはあなた - Everything you've ever Dreamed

    5月下旬。また父の命日が巡ってくる。父が自殺したとき僕は18才で、悲しみ、悔しさ、怒り、後悔、そういったものが溶け合わずにごちゃ混ぜになった思いや、生活や将来への不安はもちろんあったけれども、ほとんど音も立てずに排水口に流れていく冷たい水のように消えてしまった父の命の儚さにただ呆然としていた。 あのとき、呆然とするばかりの僕に母が言ってくれた「家を改修してラブホテルでもはじめよう」とくだらない言葉の強さと明るさに、僕がどれだけ照らされ、救われただろうか。言葉は神だと当に思った。今もその思いは変わらずにいる。当時も今も、父が自ら命を絶ったことについての怒りはない。ほとんど自由に生きられない僕たち人間が、ほとんど唯一自由に出来るのが自分の命ならば、死に方くらい選べたっていい。そう、自分に言い聞かせてきた。 嫌なのは美化することだ。父は遺書を、言葉を何も遺していかなかった。親戚たちは「お父さん

    ラブホテルをはじめるのはあなた - Everything you've ever Dreamed
    ponkotukko
    ponkotukko 2014/05/28
    じんわりきた
  • カイゼンとは死ぬことと見つけたり - Everything you've ever Dreamed

    僕は品会社の営業課長。現在、ちょっとした社会問題になっている《外産業バイト人材不足》の余波を受け、4月頭から営業マンの僕も含めた社員がバイトの穴埋めのために現場ヘルプに入っている。都内某所のホテル内レストラン。朝五時に厨房に入ってのマッシュポテトつくりからはじまり、盛付けからディナーの仕込みの手伝いまでが僕に課せられた仕事。年中無休の現場で、労働が12時間超になることもざらだ。僕は管理職なので残業代はもちろんナッシング。 現時点でバイトは定員6名のところ2名しかいない。都内の私立大学に通う大学生君と、昨年秋に倉庫会社を定年退職した定年さんの2名。4名欠。 なにせ人不足、大学生君が大型連休の頭に突然「ゴールデンウイークだから」という反論不可な理由で休みを取ると言い出し、ざけんなよつっても、契約解除をすれば火の粉がふりかかって大やけどをするのは僕なので、「確かにそうだよね。楽しんできてよ」

    カイゼンとは死ぬことと見つけたり - Everything you've ever Dreamed
    ponkotukko
    ponkotukko 2014/05/26
    板挟みにあってるのにさらに上下から押しつぶされてるみたいだ
  • 妻から若い男を紹介されて漏らすほど動揺した。 - Everything you've ever Dreamed

    二週間ほど前、が若い男を紹介するといってきたとき僕に沸き起こったのは、嫉妬でも怒りでもなく烈しい後悔であった。こんなことになるならが働きに出るのを許さなければよかった。こんなことになるなら「私は裕福な暮らしをしたい」とが言いだしたとき、強くぶっておくのだった。そんな烈しい後悔だった。 「キミの給料では足りない」「人形のお洋服が買えません」が僕の収入への不満を理由にパート仕事を始めると宣言したとき、僕は反射的にに対して右手を振り上げていた。悲しかった。月一万八百円の小遣いでのやりくり。現場にヘルプで入って朝5時からのマッシュポテトを作り。常態化した12時間労働。小生意気な学生バイトから「ポテトマッシャー」「ユニットリーダー」という蔑称で呼ばれる日々。そんな非人間的でダリぃ日々に耐えてこられたのは、ダーリン、君がいるからだよ。そんな僕の想いは無に帰したのだ。 これは嘘だ。悪夢にちがい

    妻から若い男を紹介されて漏らすほど動揺した。 - Everything you've ever Dreamed
    ponkotukko
    ponkotukko 2014/05/20
    いい意味で生々しい。男女っていうのはこういうものだ。