私の父は一年前に病院で亡くなった。 病院で出されていた父への食事にはいつも「とろみ」という札が付いていて、父は死ぬ直前まで、とろみを食べ続ける事を強要された。病院からも家族からも。 白米はドロドロの粥。おかずの煮物も炒め物もデザートまでも、父に出されるものは全て細かく刻まれ片栗粉に似た透明なとろみで覆われていた。水やお茶でさえも。全てにとろみ。 なぜ「とろみ」を付けるのかというと、とろみ剤により粘度を付けた食べ物は喉をゆっくりと通過する為、特に老人の誤嚥による肺炎の防止になるのだそう。父・79歳、飲み込む力(嚥下機能)の検査をした上での病院の決定だった。 ▲父の宿敵、とろみ調整剤の面々 とろみ地獄のはじまりとなった入院は、別に嚥下機能のせいではなかった。とある手術の後遺症で入院が長引いたその間、誤嚥したら危ないからという事でとろみ食となったが「とろみが不味い→食欲落ちる→体力落ちる→ので後