こどものとも235号【10】「くいしんぼうのあおむしくん」(文:槇ひろし 絵:前川欣三)の付録”絵本のたのしみ”に、山本忠敬自身の絵本論が、この『とらっく とらっく とらっく』を例に論じられています。 以下に、その全文を紹介します。 絵本の絵はさし絵ではない。ということは、絵本の絵はどんな立派な画家が描いたよい絵画であっても、その一枚一枚の絵が独立静止していては、絵本の絵として価値はなく、単なる物語のさし絵であり、それはさし絵のたくさんある物語の本であって絵本ではない。 物語絵本の絵は、個々の絵が、それぞれに時間的なつながりを持ち、一つの絵と一つの絵との空間に新しい動きが生まれ、動きがあるからそこに生命が生まれて初めて物語が展開される。 だから、極言すれば、絵本の絵はその一枚一枚を取り出して見たときは無価値である。しかし、一つ一つの絵が立派な絵画であることはもちろん、しかもそれぞれが時間的