(前回から読む) 橘川:70年代後半にソニーがウォークマンを出した時には、それを作った人の「これを作りたい!」という意欲が消費者の僕たちに伝わりましたね。今の新商品を見ても、そういう作り手のパッションが伝わってこない。ジョブズがiPadを出した時には「どうだ!」という自慢気な顔が思い浮かびましたが(笑)。もともと日本には、モノづくりとしての自負というかプライドやこだわりが、もっとあったと思うのですが。 林:ウォークマンは戦後日本が世界に送り出した数少ない成功モノの一つだと思います。それまで、音楽とは閉鎖空間で聞くもので、開けた場所では、邪魔な街頭BGMがあるくらいでしたから。しかしそこに、自分を好きな音楽環境で包むことができるウォークマンというモノの登場は、世界に激震を起こしましたよね。 橘川:僕も「ウォークマンとは音楽を聴く装置ではなく、余計な音を聞かないための装置だ」と書いたことがあり