才能とはかくも残酷なものなのか。つくることを生きる糧とした表現者たちを、映画「零落」はすさまじい勢いでえぐる。だがそこにさほど共感はない。原作者・浅野いにおが描いた世界を映像にしたかった、浅野いにおただひとりに向かった映画なのだと、監督・竹中直人は語る。 竹中直人(たけなか・なおと) 1956年神奈川県生まれ。幼少期より両親に連れられ映画館に通い、映画に興味を持つ。高校時代に8ミリカメラに出会う。多摩美術大学グラフィックデザイン学科に入学し、短編映画を撮りはじめる。また在学中より素人勝ち抜き番組に出演し注目される。1983年デビュー以来、俳優、ミュージシャンなど幅広く活躍。1991年初監督作品「無能の人」を発表。主演も務めた同作で第48回ヴェネツィア国際映画祭国際批評家連盟賞、第34回ブルーリボン賞主演男優賞、映画「Shall we ダンス?」(監督:周防正行/96)で第20回日本アカデミ