歴史家が書いた怪異の記録 『捜神記』の著者は東晋の干宝(かんぽう)です。干宝は佐著作郎(さちょさくろう)()()という官職についていましたが、丞相の王導(おうどう)の推薦(すいせん)で国史(国家の歴史を書き記す役職)を兼務することになり、西晋の歴史書『晋紀』を書きました。のちに散騎常侍(さんきじょうじ)まで出世しました。 つまり干宝はエンタメ作家ではなく、国の正史を記す史家であり、れっきとした官僚でした。『捜神記』は志怪小説(しかいしょうせつ)というジャンルに位置づけられていますが、干宝は自分が集めた情報の中から超自然的要素のものをまとめて編纂(へんさん)したのであって、娯楽のための面白話集を作っているという意識はなかったと思います。 人々が語り伝えている超自然的な話は口伝えの過程で自然と物語っぽく洗練されてくるので、結果として物語っぽく面白くしあがったものが多く、それらが人々の心をつかみ