朝鮮民衆の社会史 現代韓国の源流を探る (岩波新書 新赤版 2030) 作者:趙 景達 岩波書店 Amazon タイトル通り硬い内容を想像していたが、読んでみると思っていたよりずっと面白い一冊だった。この一冊で両班・中人・良人・賤人の四身分からなる李氏朝鮮の社会を俯瞰することができる。村祭りの様子や賤民が両班に成り上がる方法、芸能民や最下級の賤民「白丁」など周縁的存在の生活、宮女や妓生などの女性の境遇など、幅広いトピックを扱っているので気になる箇所を読むだけでも楽しめるし、通読すれば朝鮮社会の基層をなす「這い上がり志向」と「分かち合い志向」をよく理解できる。この二つは朝鮮社会を理解するうえでの重要キーワードで、本書では何度も登場する。 朝鮮における「這い上がり志向」を示すものとして、民衆の両班志向があげられる。両は最上位の身分だが、一章『朝鮮社会の儒教化』によると朝鮮では身分上昇の手段が多