20世紀最大の哲学運動のひとつ論理実証主義の記念碑的著作『言語・真理・論理』。この哲学書の限界はどこにあったか、また、現在ここからくみ取れる刺激的な洞察にはどんなものがあるか。哲学者・青山拓央氏が鋭く読み解きます。 何がどのように存在するかについて、経験的に検証できないことを曖昧な表現で論じている――。哲学史における多くの議論をこのような議論として捉え、それを「形而上学」と呼んで批判することは今日でもよく行なわれていることだ。しかし、哲学業界の外部からそういった批判をする人々のほとんどは、論理実証主義という運動の隆盛と衰退についてよく知らない。すなわち、その運動のメンバーが過去に苛烈な形而上学批判を行なったことや、彼らの形而上学批判の理論にさまざまな欠陥が見出されてきたことを知らない。その結果、すでに吟味され尽くした批判が、いまでも繰り返されることになる。 論理実証主義はおもに一九二〇年代