その店が閉店してからもう3年近く経つというのに、私は今でもその場所のことを夢に見る、二度と食べられない味を思い出す、今どこで何をしているかすらわからない店主に思いをはせる。 夜の駐車場でひとり、気が済むまで泣いた。それでいい、と思えた ◎ ◎ 私は喫茶店というものが好きだ。 チェーン店も良いのだが、個人経営の店の何とも言えない独特な雰囲気はいつだって私の心をくすぐり、細部までのこだわりは私を魅了する。 厳選された豆でいれられるコーヒー、テーブルに置かれた昔懐かしいまあるい占いの機械、エメラルドグリーン透き通るクリームソーダ、他では見たことのないデザインのティーカップ。 ……今まで足を運んだ喫茶店は数知れないし、幾つものこだわりが私の心をきゅっと掴んだ。 その中で、いつまでも忘れられない店がある。 その店は東京下町北千住から商店街を抜けたところ、駅からは10分近く歩いたとこ