異国を旅していると、たまに、思いがけないピンチに遭遇する。 飛行機の欠航に見舞われることもあれば、悪い人に騙されそうになったり、ちょっと危険なエリアに迷い込んでしまったりすることもある。 でも、いろんな国を旅してきても、こんなにも奇妙なピンチに遭ったことはなかった気がする。 ある昼下がり、ドイツのケルンにある小さなレストランで、あと一歩踏み込んでいたら大変なことになっていたかもしれない……というピンチに、遭ってしまったのだ。 その「ピンチ」に遭う前日、ドイツのデュッセルドルフにあるバーで、僕はアルトビールを呑んでいた。 濃い茶褐色をしたアルトビールは、ホップの香りも強く、きりっとした苦みが味わい深い。 「美味しい……!」 僕が言うと、たまたま相席になった地元の男性たちが、嬉しそうに笑った。 曇り空の下のテラス席で、細長いグラスに入ったアルトビールを呑み干すと、一人で呑んでいたおじさんが愉快