――小説を書いたら、より多くの人に読んでもらいたい。 それは、小説を書く人間の多くが望むことだろう。 私は2016年に『裏切りのプログラム ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬』で文藝春秋から小説家としてデビューした。第23回松本清張賞の最終候補作を改題したものだ。この本を切っ掛けに、私は商業小説の世界に飛び込んだ。そして、紙の出版社が抱える問題に直面することになった。 裏切りのプログラム ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬 https://amzn.to/2HCnK9s 本は世に多く出ている。特別なベストセラー作でない限り、ほとんどの本は積極的に売られることはない。とりあえず出しておき、運よくヒットした本や作家に広告費を投入する。出版社のビジネスモデルはそうしたものだ。それは原始的な農業に似ている。 出版社は多くの種をまき、その中から育ったものだけを刈り取る商売をしている。しかし種である作家は、誰もが茎を伸ば