2022年5月に55歳で急逝した総合政策学部教授の中山俊宏君による著書が2冊相次いで刊行された。 1冊目は、『理念の国がきしむとき──オバマ・トランプ・バイデンとアメリカ』(千倉書房、2023年3月)である。16年の米大統領選挙におけるドナルド・トランプ当選に言葉を失った著者は、自分が何を見落としていたのかを探し続けた。その6年間に著者が各所で書いた論考を再構成したのが本書である。 著者は、トランプが米国政治を変えた原因ではなく、アバター(化身)だという。トランプが登場したことによって米国政治が変わったのではない。変わりつつあった米国政治の実相をうまくすくい取って現れたのがトランプであり、トランプという人間とトランプ現象は一致していないともいう。トランプ現象によってはっきりと見えてきた米国政治の地殻変動、そしてその分断は、すでにバラク・オバマが大統領になったときから始まっていた。そして、そ