広いおでことは対照的に、私の世界は狭い。 ファッション誌より赤川次郎とビートたけしの毒舌本が好きだったり、 ミルクティよりブラックコーヒーが好きだったり、 黒や黄色いねずみより青いねずみが好きだったりする自他共に認める変わり者のわたしでも、 さすがに実兄に本気で恋してしまうとは思わなかった。 高校時代を女子高の文芸部で過ごし、何を間違ったかそのまま 文学部に進学してしまった私に言い寄る物好きなどいない。 何度か合コンに誘われ、興味本位でついて行ったこと一回限り。 わたしの決して豊かではない胸元をじろじろと弛緩し、 どさくさにまぎれて肩を組んできた男の面体を張り倒して以来、異性にはとんと縁がない。 元々、他人に対して興味の薄いわたしにとって、兄さんと共に過ごす時間は何よりも大切だったし、 これからもきっとそうだろう。 兄さんはやさしい。 年頃にもかかわらず男っ気もなく、ついでに身を飾ることに