5月17日に発売になる、倉数茂の小説『忘れられたその場所で、』を、noteにて有料配信いたします。 第一章を無料公開しておりますので、作品の空気感をお楽しみくださいませ。 (▲公開にあたっての想いはこちら) 読み終えられた方は、ぜひ「#忘れられたその場所で、」で感想をつぶやいていただけましたら。みなさまの感想を伺えるのを、どきどきしながらお待ちしております! それでは、どうぞ。 1 髪の毛の先をツッとかすめた。 つづけて幾つも白い影が落ちた。 目をあげると暗い空から尽きることなく雪片が落ちてくる。しばらくのあいだ空を眺めてから、本降りになる前に帰らなくちゃと足を速めた。 最初のひとひらが落ちてくる瞬間を見てみたい。滴原美和はそう思っていた。けれども降り出したと気づいて頭をあげたときには空の奥まで一面の雪で真っ白だ。いつのまにか降りはじめ、いつのまにか降りやむのが雪であって、天から落ちてくる