岩波新書の青、マウ、クラウスニック「ナチスの時代」(1961年)は1933年から45年までのドイツ現代史であり、「ナチスの時代」について同時代を生きたドイツ人の著者らが反省的に記したものである。 200ページそこそこの小史でありながら、ナチ時代のドイツを叙述したものとして本書は有益だ。確かに「ナチスの時代」に関して、すでに私達が知っている掲載事項も多い。また従来研究にて触れられている定番の事柄が本書には載っていない、ナチスに関する間違ったイメージ俗説に対する否定がない、1961年の比較的古い書籍なため最新のドイツ史研究の成果が盛り込まれていないの難点はある。しかし、本新書のように通史がコンパクトに一冊にまとめられ、しかも「ナチスの時代」の国内状況での当時の国民的高揚を知るドイツ人みずからが後に著した著書を読むことで、歴史の事後的事実ではなくて、同時代に生きた人間を通しての時代的雰囲気を直(