徴兵対象年齢が引き下げられ、人々はウクライナの兵力不足と苦戦を否応なく意識している。しかし一方、街の復興と「正常化」は、ロシア軍侵攻当初に人々を結び付けた国家防衛の一体感を次第に薄れさせて行く。希望の底に重苦しさが蟠る日々、「誇り」は減じ「悲しさ」や「恐れ」が膨らみ始め、そうした状態に慣れるにつれて、かつての汚職や政争が頭をもたげているという。【現地レポート】 前回筆者がウクライナに滞在した2022年12月~23年1月の冬は、ロシア軍による電力施設攻撃が集中して停電が多く、首都キーウは暗闇に包まれていた。ロシア軍の侵攻当初に比べると人が戻っていたものの、一部の商店や飲食店は閉まったままで、市民が生活を謳歌する状況にはなかった。 今回、街の賑わいぶりは明らかに異なるレベルである。店は軒並み開き、中心街ではショッピングを楽しむ市民が目立つ。ミサイルやドローンによる攻撃を知らせる警報は毎日のよう