科学技術の発展は、私たちにさまざまな恩恵をもたらしてくれたが、その一方で、人間関係の希薄化、温暖化をはじめとする環境破壊、生命倫理や軍事技術の問題など多くの深刻な問題とも深く関わっており、もはや科学技術は必ずしも万能でないと言われるようになっている。現代の科学技術の基盤となった近代科学がまさに生まれようとしていた16世紀における数学をめぐる論争を採り上げた著書で、日本人で初めてフランスで最も権威ある学術団体から賞を受けた現代教養センターの東慎一郎准教授に、近代科学の発展に果たした数学の役割などを聞いた。【聞き手/毎日新聞編集委員・中根正義】 高校時代に科学の負の側面を知り、科学史研究の道へ ──東先生は「ヨーロッパ初期近代科学思想」「ルネサンス思想史」がご専門です。その中で、学生に教えていらっしゃるのはどんな科目ですか。 分野としては「科学史」ですが、入門科目である「人文科学」で、哲学も教