30年近く前に世界的に脚光を浴びつつ、いまだ日の目を見ない夢のエネルギー技術がある。「凝縮系核反応」だ。常温核融合とも呼ばれる。常温から数百℃程度の環境で核融合を起こし、その際に発生する膨大なエネルギーを利用するという技術で、実現すれば長期間にわたって自律的に熱を発し続けるエネルギー源が手に入ることになる。 凝縮系核反応は、金属内のように原子や電子が多数、集積した状態で、元素が変換する現象である。核融合によって放出される膨大なエネルギーを持続的に得ることができ、「試験管の中の太陽」とも呼ばれた。基本的には水の電気分解と同じような簡単な装置で核融合を実現できるとされ、実用化できれば、今の社会のエネルギー事情が大きく変わる可能性を秘めている。極端な例を挙げれば、燃料補給なしで走り続ける自動車が実現可能になる。 常温核融合の始まりは1989年3月。米ユタ大学で、2人の研究者が化学反応では説明でき