訓読 >>> 279 吾妹子(わぎもこ)に猪名野(ゐなの)は見せつ名次山(なすきやま)角(つの)の松原いつか示さむ 280 いざ子ども大和へ早く白菅(しらすげ)の真野(まの)の榛原(はりはら)手折(たを)りて行かむ 281 白菅(しらすげ)の真野(まの)の榛原(はりはら)往(ゆ)くさ来(く)さ君こそ見らめ真野の榛原 要旨 >>> 〈279〉いとしい妻よ、お前に猪名野は見せた。今度は名次山と角の松原を、早く見せてやりたいものだ。 〈280〉さあみんな、大和へ早く帰ろう。白菅の茂る真野の榛(はん)の木の林で小枝を手折って行こう。 〈281〉白菅の生い茂る真野の榛原を、あなたは往き来にいつもご覧になっているのでしょう。私は初めてです、この美しい真野の榛原は。 鑑賞 >>> 高市黒人夫妻が従者と共に真野へ遊覧に行った時に詠まれたもので、279は黒人が妻に与えた歌、280は従者たちに呼びかけた歌、2