僕はこの歳になるまで松本清張を読んだことがありませんでした。しかし「限りある貴重な人生」なので、死ぬまでに有名どころの小説は一通り読んでおきたいと思い立ち、まず人気の短編集『張込み』を手に取って読み始めてみました。松本清張は1992年に82歳で亡くなった日本を代表する作家です。夏目漱石や芥川龍之介のように極端に古臭くなく、昭和の香りがいい意味でプンプンに漂ってくる短編ばかりでした。殺人事件が起きた背景や事件の当事者たちの心理描写、そしてトリックなどなど、その事件現場に居合わせたかのような感覚に包まれました。 この短編集を読み終えた瞬間に「松本清張をもっと読みたい!いや、絶対に読むべきだ!!」という強い気持ちに駆られ、古本が安く売られていないかなあとネットサーフィンを始めたところ、出品されたばかりの大物に出くわすことができたのです。 それはちょうど早朝の散歩をしていた時でした。普段はPosc