ここ数日の職場でのランチの話題は、ジダンの「頭突き」と元アイドル歌手、甲斐智枝美の自殺に尽きるのではないだろうか。「なぜ/どうして」という緒言から「そうだよね」という了承でもって45分間のビジネス・コミュニケーションは終了する。 「なぜだって? たんに当人が望んだからだ」とフーコーが自殺について書いた文章『かくも単純な悦び』を、僕はそのとき披瀝しなかった。なのでここに書く。 『かくも単純な悦び』は、フランスのゲイ雑誌『ゲ・ピエ』(Le Gai Pied)に掲載されたもので、「同性愛者はしばしば自殺する」という精神医学(精神分析)的言説に対して、まずフーコーは絡む。「しばしば」なる語には、悦に入ってしまう、と。 すらりとしてか細く、あまりにも青白い頬をした青年たちを想像してみよう。もう一方の性の敷居をまたぐことができないような青年たち。彼らは、生涯を通じて、死の域に入っては、騒々しい音を立て