東北大震災が起きてしばらくした頃、なんとなく『十五少年漂流記』と『蝿の王』を読み返した。無人島に流れ着いた少年たちが権力をめぐって殺し合いに発展する後者と、基本的には仲良くやっていく前者という記憶があったので40年ぶりに読む『十五少年漂流記』はきれいごとにしか感じられないんじゃないかと予想しながら読み始めた。『蝿の王』は確かに印象は変わらず、『十五少年漂流記』はきれいごとどころか、仲間内に不協和音が生じたところで外敵が現れ、一気に団結が深まるという展開だったためにイスラムやロシアを敵視しなければ生き生きとしないアメリカを思い出し、攻撃性を内に向ける『蝿の王』と、外側に向ける『十五少年漂流記』という対比に印象が変わってしまった。1888年に書かれた『十五少年漂流記』は1871年に2ヶ月間だけ成立したパリ・コミューンの記憶を子ども向けの冒険小説にアレンジしたものなので、世界初の労働者自治政府や