陽光が眩しい。 11月にもなると空は澄み、光は冷たくパリッと乾燥した空気の中を一直線に落ちてくる。混じり気のない光と空気に晒されると、身や心さえも洗われるように感じられる。私を渋らせるものは何もない。一年で一番好きな季節。 そんな日は、機嫌良くねこを連れて散歩する。ねこなんてどこにもいないけれど。私が散歩していると、ねこはいつだって知らない間に側に寄ってきて、隣に並んで歩き出す。それがねこ。 行くあても無く寂れた商店街を歩く。着物屋、靴屋、ワインバー、ドラッグストア、宝石店。店はあれども人はいない。かつては賑わっていた享楽の地にこだまするのは、コツ、コツ、コツ、という私の足音だけ。やや伸びた私の影をねこが追う。ねこは足音を立てない。 いつしか雑駁とした路地裏に入る。狭く入り組んだ石畳の道は、両脇に並ぶ店に挟まれて、今にも潰れそうになっている。これほど人気が少ないと、どこまで侵入して良いのか