「もうだめだ」「別れたい」──誰もがそんな気持ちを抱きながら、結婚生活を送っている。だからこそ、ともに時間を過ごすことを選んだ夫婦の話に耳を傾けたい。2004年に亡くなった作家・中島らもさん(享年52)の妻の中島美代子さん(72才)が夫婦生活を振り返る。 * * * 亡くなってからもうすぐ20年ですが、らもと過ごした景色はいまでもすぐ目に浮かびます。いなくなったことを忘れて、“これ、らもに聞いてみよう”と思ってすぐ、“あ、違う。いまはいないんだ”とハッとすることすらある。あの人っていまどうしてるのかしらとか、この音楽、どう思う?とか、らもは何でも知っていて何でも答えてくれるから、いまでもつい、いろいろ聞きたくなってしまうんです。 初めて会ったのは神戸・三宮のジャズ喫茶。私は短大1年生、彼は灘高3年生でした。らもは腰まで伸ばした長い髪にベルボトムのジーンズ、色あせたTシャツ姿。年下のはずなの