J.G.バラードは何も信じてないから信用できる イギリスのニュー・ウェーブSFを代表する作家とよく言われるジェームス・グレーアム・バラードことJ.G.バラードは私の一番好きな小説家の一人なのだが、どこが好きかと言われると説明しづらい。 SF作家ではあるものの、時代を追うごとに小説の舞台が現実の世界に近づいて、出来事も特にSFではなくなってくる。(この辺はウィリアム・ギブスンもそう) たぶん一番有名なのは世界がどんどん結晶化していく『結晶世界』(1966年)だと思うが、その数年後の『クラッシュ』(1973)ではすでに単なる交通事故に興奮する人の話になってるし、最近トム・ヒドルストン主演で映画になった『ハイ・ライズ』(1975)も単に高層ビルに住んでる人が排他的なコミュニティを作るだけの話だ。もちろんそれが好きなのだが。 とにかくバラードの小説を読んでいると深い安心感を覚える。それはたぶん、作