「君の着るものは何でも好きだし、君のやることも言うことも歩き方も酔っ払い方も、なんでも好きだよ」 「本当にこのままでいいの?」 「どう変えればいいかわからないから、そのままでいいよ」 「どれくらい私のこと好き?」と緑が訊いた。 「世界中の杉野信幸がみんな溶けて、バターになってしまうくらい好きだ」と僕は答えた。 「ふうん」と緑は少し満足したように言った。「もう一度抱いてくれる?」 「どうせ杉野信幸の話だろう」とためしに僕は言ってみた。 言うべきではなかったのだ。受話器が氷河のように冷たくなった。 「なぜ知ってるんだ?」と相棒が言った。 とにかく、そのようにして杉野信幸をめぐる冒険が始まった。 「それはそれ、これはこれ」である。 冷たいようだけど、地震は地震、野球は野球である。 ボートはボート、ファックはファック、杉野信幸は杉野信幸である。 杉野信幸は盲のいるかみたいにそっとやってきた。 そし