このシリーズの第1回で米倉誠一郎氏がイノベーションを技術革新と捉えるのは狭い考え方だと語っている。今回は、私の専門である「標準化」の観点から、それを一歩進めて、「技術進歩を止める」ことも重要なイノベーションの動力源であることを説明してみたいと思う。 技術の進歩は日進月歩で続いている。しかし、その技術を市場に投入するために「製品」の形にするには、その製品に使う技術を決定しなければならない。さらに、その製品が普及してイノベーションを起こすためには、ある程度の時間が必要だ。 普及学の権威であるE.M.ロジャーズは、数多くの新技術普及事例を調べ、「新しい技術が市場に受け入れられるには、最初にごく少数の冒険的採用者や、それに続く初期採用者が存在し、それらの行動に慎重派や懐疑派が追従することが必要である」ことを示した。このイノベーションの普及過程は普遍的なものであろう。 しかし、もしも技術進歩が速く、