『 馬鹿野郎!戦争だぞ! 』 -- 大橋先生の戦争 -- ◯ 東部軍参謀になってからのことである。初めて東京空襲のあった翌日、東京都庁の役人が血相を変えてやってきた。「銀座に不発弾が落ちて、家をこわしたから弁償せよ・・・」というのである。これは大変なことになったと、一緒に現場にとんで行こうとして考えた。東京周辺には高射砲が一師団も構えている。これが一斉に撃ち出したら、不発弾はないとしても、砲弾の破片が雨のように降ってくる。賠償金をいくら準備したらよいものか?と途方にくれたのである。・・・そのうちに私の脳裏に戦場の状況がよみがえった。私は急に顔を上げて都の課長(部付少尉の同僚)を睨みつけ「馬鹿野郎!戦争だぞ!」と、半分は自分に向かって怒鳴りあげて、幕となった。 (同台経済懇話会発行「草萌え」第一号に発表され「兵法経営研究会」会報第13号に転載された大橋先生の二・二六事件、盧溝橋事件、東部軍参