田村修一=文 text by Shuichi Tamura cooperation by Arnold Ramsay 2008年3月26日、スタッド・ド・フランスにつめかけた観衆は、スタンディング・オベーションで途中交代するひとりの選手を祝福した。彼が得たPKをフランク・リベリーが決め、最少得点差ながらフランスはこの試合でイングランドに勝利した。 「パリの観衆からブーイングを浴びたのは、そう遠い昔ではなかった」と、“彼”ニコラ・アネルカは振り返る。 「同じ人々から、今度は祝福される。凄く嬉しいけど、この世界の変化の激しさをよく表わしていて、なかなか感慨深いよ」 アネルカは希代のトラブルメイカーだった。練習には平気で遅れ、ものおじしないもの言いで、行く先々で監督やプレスと衝突を繰り返す。若手を育てることでは定評のあるアーセン・ベンゲルですら、アネルカだけは御すことはでき