丘を越えると緑の平原に航空産業の「小国家」が広がっていた。ブラジル・サンパウロから東へ80キロ、人口62万人の工業都市サンジョゼ・ドス・カンポス。世界3位の航空機メーカーで、小型ジェット機ではトップを走る「エンブラエル」の本社工場を訪ねた。 サッカー場60面分の広大な敷地に白い工場が並び、2000メートルの滑走路が延びる。隣接地には空軍の航空宇宙技術総司令部と、米マサチューセッツ工科大学(MIT)に倣って設立された航空技術大学校(ITA)。 工場内の組み立てラインでは、透明なゴーグルをかけた作業員が機体断面に体ごと入り込んでネジを一つ一つ打ち込み、手作業でエンジンを取りつけていた。 小型ジェット機は「リージョナルジェット(RJ)」とも呼ばれ、一般的に座席数が99席以下の旅客機を指す。同社は1969年に国営企業として出発し、94年の民営化後に「ERJ」で小型ジェット機市場に参入して急成長した