対話編の中で何度かふれられています。 プラトンの考えの最も中心は、人間のさまざまな「真理」の根源は、世界が何であるか、という事実のうちにではなく、「真善美」という価値的なものの存在本質のうちにある、という考えです。プラトンの「真実在」は、イデアですが、イデアとは真善美の根拠をなすもです。「ほんとう」とか「美」とか「善」の本質は、世界がそれ自体として何かという問いの枠組みの中では決して答えられない。それは新しい本質学を必要とする。ところがそれは自分たち人間のもつ言葉ではなかなか簡単に答えられないので、仕方がないからミュートス(神話)の形で語るほかない。これがプラトンの基本の構えです。プラトンが真善美という人間の価値審級の本質をどう考えていたのかは、彼のエロス論や恋愛論を読めばよくわかります。彼がエロス論、恋愛論を哲学の中心主題として設定したということも、彼の思考の独自性をよく表現しています