ミスコピーで折れる心 大学のゼミがはじまる時間。今日発表担当のP君がなかなか現れない。教室がざわつきだしたころ、別の学生が、「先生、今Pから、コピー機が混んでてレジュメの印刷でちょっと遅れるってLINE入りました」と告げる。 ……発表のときくらい不測の事態にも備えておけ、と一喝すべきか、あるいは、これが卒論提出なら即留年なのだがレジュメでまだよかった、くらいの嫌味で済ませるべきか、頭を悩ませつつ待つことさらに十数分、「先生!」、かの学生が大音声で再び報告に及ぶ。 「大量のミスコピーをしてしまい、心が折れたのでこのまま帰ります、って、Pから」 いかに繊細な心を持つ若者たちでも、さすがにこのP君の心のかぼそさには私とともに驚いてくれるのではないかと思う。そのときも、周りの学生たちの口からP君を責めることばは出てこなかったが、それは待ちぼうけを食わされた怒りよりも、呆れていたのだと思う。そしてお