私は、子供の頃から、算数は得意だったが、国語は苦手だった。 苦い記憶として今でも覚えていることがある。 小林秀雄の小説の抜粋があって、この文章が意味するものはどれか?という四択の問題がテストに出て、私の答えは正解を外した。 後で復習してみてもその意味がわからず、正解に納得がいかなかった。 「読み違いを起こすのは書き手側にも改善の余地がある」 「文章をどう解釈するかは、読み手の自由のはずだ」 などと自分の読解力を棚にあげて不満を吹き出させた。 その頃から、言葉というものは曖昧であって面倒くさいものだという印象が自分に植えついた。 最近、この面倒くさい言葉というものを冷ややかに、そしてまた、前向きにも捉えなおすキッカケとなる本と出会った。 始めに感覚ありきなのだ フェルディナン・ド・ソシュールは、言葉の分節化作用を世に知らしめたスイスの言語学者である。 単語が生まれるプロセスは、事物に対して人