足立区で起こった殺人事件の犯人とインターネットで名指しされた、お笑い芸人・スマイリーキクチが誹謗中傷と戦った10年間を綴った書。現在ではネットにおける誹謗中傷や脅迫に対する摘発はかなり進んでおり、新聞でも取り上げられたりするが、著者への中傷が始まった1999年といえば警察や弁護士に専門家がわずかしか存在しなかった時代。本書の詳細な記録は実に貴重である。現在でも通じる部分もあり、読んで損はないだろう。 それにしても、司法のインターネット・リテラシーは10年前にこれほど低かったとは少々驚きである。本書が詳述する警察・弁護士・検察とのやり取りは全くトンチンカンで、18人の書類送検で終わるまで事件解決に10年を要したのも納得できる。ちなみに巻末には「ネット中傷被害に遭った場合の対処マニュアル」と題して、筆者の経験に基づいたアドバイスを掲載する。