14世紀、21歳のイブン・バットゥータは、巡礼とイスラーム法の研究のため、現在のモロッコを旅立ち、30年間におよび、北アフリカ、中東、インド、中国を巡る。その旅は『大旅行記』(東洋文庫)全8巻となっているが、道中に滞在したインドの王様との8年間を後に語り、まとめられたのがこの5巻だ。稀代の旅人と「インドの織田信長」が織りなす、展開が予想の斜め上どころか別次元へ連れて行ってくれるインド宮廷絵巻。これがまあおもしろいのなんの。 この本の正式名称は『諸都市の新奇さと旅の驚異に関する観察者たちへの贈り物』だ。『イブン・バットゥータのメッカ巡礼記』ないしは『三大陸周遊記』とも呼ばれ、その名の通り、史上最も偉大な旅行家とも言われるバットゥータ(1304~1368)が、メッカを目指して北アフリカの海岸沿いの陸路を行き、メッカに到着した後も旅をつづけ、現在のイランやイラク、アラビア半島などを経てインド、そ