パティ・スミスは英語版が先頃刊行されたばかりの村上春樹の新作『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』の書評をニューヨーク・タイムス紙に寄稿している。 同作品について、パティは次のように評している。 「わたしはこの作品がより共通な人間の体験に根差したものになるという漠然とした予感はしていたし、わたしの好みである『ねじまき鳥クロニクル』でところどころ垣間見せていく異質な皮膚感覚はあまり味わえないのだろうとは思っていた。しかし、わたしは妙な調べが形作られていくのを、癒されえない小さな傷に巣食って少しずつ大きくなっていくのをこの作品で感じ取った。この『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』を書くために村上が自身のどのような側面を源泉にしたとしても、それは村上がこれまで成し遂げてきた象徴主義的な労作の数々の遺跡のどこかに横たわっているものであるはずなのだ」 「この作品は村上作品が初めてという