(英エコノミスト誌 2012年8月18日号) 人間はただ人間であるだけではない。無数の微生物の集まりでもある。 政治的な革命家は、世界をさかさまにひっくり返す。科学的な革命家は、世界をむしろ裏表にひっくり返す。そして今、生物学的な意味で人間とは何かという概念に対して、文字通り、裏と表をひっくり返すような革命が起きている。 従来の考え方で言えば、人体は10兆個の細胞の集合体であり、その細胞それぞれが2万3000個の遺伝子の産物だ。革命家が正しければ、それらの数は実際よりも非常に少なく見積もられている。人体のあらゆる器官、特に内臓には、隅々までマイクロバイオーム――数百種、100兆個体に上る細菌の集合体――がすみついている。 これらの細菌は全体で300万個の非ヒト遺伝子を持つ。生物学界のロベスピエールたちは、それも勘定に入れるべきだと考えている。人間は単一の有機体ではなく、無数の小さな有機体が