この本の著者は、対象を客観的に記述した後に考察を加えるのではなく、およそ童貞は「キモチ悪い」という偏見ないし主観的結論がまず先にあり、その結論に沿うようなエピソードを並べている。インタビュー形式で書いてはいるが、随所で我慢できなくなり、長々と持論を展開し始める。 なぜここまで主観的・一面的な筆運びになるのか。それは著者自身が「キモチ悪い」童貞マインドの持ち主だからに他ならない。あたかも取材対象が語る様々の「キモチ悪さ」の原因は、おしなべて性行為の経験がないことであり、性行為さえすれば、諸々の問題がすべからく解決するかのごとくである。いったいこの著者にとって、性行為はどれほどの万能薬・魔法の杖なのであろうか。これほどに性行為の意味を肥大化させ、神格化させている者を見るのも珍しい。しかし、まさにその着想、性行為を過大評価し崇めるその発想こそが、残念ながら、「キモチ悪い」童貞のそれなのだと知るべ