高く美しい声は、いつの世にも人々を魅了してきた。300年ほど前のイタリアでは、少年の声を永遠に保つことを目的に去勢手術をほどこした“カストラート”と呼ばれる歌手たちが、人気ロックスターのように華々しく活躍していたという。 “カストラート”とは、変声期前である10歳から12歳頃に去勢手術を受けることで男性ホルモンの分泌を抑制し、第二次性徴期に起こる声帯の成長を防ぎ、声が損なわれるのを防いだシンガーのこと。少年の声帯のまま身体は大人へと成長するため、結果、大きな肺活量に対して天使のような声質を持ち合わせるという圧倒的な特徴を持っていた。そもそもの起源は16世紀、女性が教会で歌うことを禁じられたことに端を発する。 彼らはイタリアや訪問したさまざまな欧州諸国のオペラ史に多大な影響を与え、ヘンデル、ヴィヴァルディ、そしてモーツァルトといったヨーロッパの偉大な作曲家たちのほとんどが、カストラートの