24歳の時に母を亡くした。もうずいぶんと前の話だ。 当時、僕は大学院生だった。下宿していた家賃3万円のアパートでその報せを聞いたはずだった。たしか電話がかかってきたんだと思う。あやふやな表現をしているのは、正直に言うとあまり記憶がないからだ。いまだに何をどうやったのかその行程がまったく記憶にない。ただカーラジオからaikoがかかっていたことだけは薄っすらと覚えているので、たぶん車を運転して実家へと帰ったんだと思う。そして母の遺体と対面した。 少しだけその時のことを思い出していた。 クルクルと洗濯物が回る光景をコインランドリーで眺める。そこには言葉のない世界があった。静寂の中でもう遠い昔となったその時のことに思いを巡らせる。いつもここにくると思い出す。それには少しだけ理由があった。 また乾燥機が回っていた。 コインランドリーの乾燥機はなかなかにパワフルなので、おもいっきり乾燥したい時や、急い